1.イエスはヘロデ王の時代にベツレヘムで生まれられた(2:1−12)
・イエスが生まれられた時、星の異様な輝きがあり、その星を見て東方から占星術師たちが尋ねてきたとマタイは記す(2:2)。紀元前7年に土星、木星、火星が魚座において接近し、星が異常な輝きを示したことが天文学的に確認されている(ケプラー)。マタイは神の子の誕生に天地が動いたと見ているがルカも同様である。
―ルカ2:8-9「その地方で羊飼いたちが野宿をしながら、夜通し羊の群れの番をしていた。すると、主の天使が近づき、主の栄光が周りを照らしたので、彼らは非常に恐れた。」
・ヘロデ王は占星術師達の来訪を聞いて不安を抱いた(2:3)。
―ヘロデはユダヤの王であったが、正統王家の血筋ではなく、基盤は不安定であり、新しい王の出現に不安を抱いた。
・ヘロデは祭司長や学者を集めて、メシアはベツレヘムで生まれるとの預言がある(ミカ5:1)事を知る。
―マタイ2:4-6「王は民の祭司長たちや律法学者たちを皆集めて、メシアはどこに生まれることになっているのかと問いただした。彼らは言った。「ユダヤのベツレヘムです。預言者がこう書いています。『ユダの地、ベツレヘムよ、/お前はユダの指導者たちの中で/決していちばん小さいものではない。お前から指導者が現れ、/わたしの民イスラエルの牧者となるからである。』」
2.ヘロデ王がイエスの命を狙う(2:13−22)
・ヘロデ王はイエスの命を狙ったが、神はヨセフにエジプトに避難するように夢で告げる。マタイはイエスのエジプトへの避難-帰還を新しい出エジプトの出来事と見て、そこに神の介入を見ている。
―申命記26:5-9「わたしの先祖は、一アラム人であり、わずかな人を伴ってエジプトに下り、そこに寄留しました。しかしそこで、強くて数の多い、大いなる国民になりました。エジプト人はこのわたしたちを虐げ、苦しめ、重労働を課しました。わたしたちが先祖の神、主に助けを求めると、主はわたしたちの声を聞き、わたしたちの受けた苦しみと労苦と虐げを御覧になり、力ある御手と御腕を伸ばし、大いなる恐るべきこととしるしと奇跡をもってわたしたちをエジプトから導き出し、この所に導き入れて乳と蜜の流れるこの土地を与えられました。」
・ヘロデはメシアが生まれたとされたベツレヘムの2歳以下の幼児を皆殺しにした。
―ヘロデは紀元前4年に死ぬが、遺言で「民が自分の死を民が哀しむように各家族から一人づつ殺すように命じている」(ヨセフス・古代史)。
・ヘロデが死んだため、イエス一家はエジプトから帰還した。
―マタイ2:20「起きて、子供とその母親を連れ、イスラエルの地に行きなさい。この子の命をねらっていた者どもは、死んでしまった。」
3.ヘロデとヨセフ
・ヨセフは神の導きに従って、委ねる人生を生きた。従う人生である。
―婚約者マリアの結婚前の妊娠を神の業として受入れ、イエスを自分の子とした。
―エジプトに逃げよとの告知をそのまま受入れ、エジプトに去った。
―帰国せよとの告知を受入れ、故国に戻り、指示に従ってナザレに住んだ。
・ヘロデは自分の力に頼って生きた。
―イスラエル王朝(ハスモン家)をローマの力を借りて倒し、王になった。正統性を主張するためにハスモン一族のマリアンメと結婚するが、やがて彼女とその子を殺す。
―ユダヤ人の支持をえるためにエルサレム神殿やサマリヤの再興を図ったが、民からは好かれなかった。
―新しいユダヤの王の出現告知を聞き、ベツレヘムの男の幼児を皆殺しにした。
・人間が自分の力に頼って生きるとき、その人生はヘロデのようになる。
―マタイ6:25-27「自分の命のことで何を食べようか何を飲もうかと、また自分の体のことで何を着ようかと思い悩むな。命は食べ物よりも大切であり、体は衣服よりも大切ではないか。空の鳥をよく見なさい。種も蒔かず、刈り入れもせず、倉に納めもしない。だが、あなたがたの天の父は鳥を養ってくださる。あなたがたは、鳥よりも価値あるものではないか。あなたがたのうちだれが、思い悩んだからといって、寿命をわずかでも延ばすことができようか。」